【日程】 2016年11月23日(水・祝)
【登壇者】 関和亮(映像監督) MC:深沢慶太(フリーライター)
【関和亮プロフィール】
映像監督。1976年長野県小布施町生まれ。1998年トリプル・オーに参加。CDジャケットなどのアートディレクション、ミュージックビデオ演出を手掛ける。ドラマ演出等活動は多岐にわたる。
■登壇~挨拶
MC:まずは一言ご挨拶をお願いいたします。
関:休日なのにありがとうございます。学生さんとはなかなか話す機会がないので楽しみにしてます。
■学生時代のエピソード
MC:まずは簡単にプロフィールをご紹介させていただければと思うんですが、1976年生まれ、長野県出身ということで、大学で東京に出てこられた感じですか?
関:そうですね、 高校まで地元にいて、高校卒業して無駄に浪人して…その後東京出てきまして理系の大学に最初にいたんですけど、馴染めず、3ヶ月ぐらいで行かなくなりました。遅れてきた登校拒否みたいな感じで(笑)今だったら笑い話なんですけど、入学した年に除籍通知が実家に届いて勘当されそうになったんですよ。
MC:掘り下げていいのか迷うところですが(笑)というと学生時代っぽいエピソードはあまりない感じですかね。
関:いや、高校までは学生時代はスポーツに打ち込んでいましたね、野球やってました..音楽は好きで、CD買ったりレコード買ったり。まあ、大学は3ヶ月だったんで(笑)その後はバイトしてましたね、居酒屋で。(MV制作に関わる仕事がしたいと)漠然と思ってましたね。
MC:映像制作の世界を志すきっかけはあったんですか?
関:きっかけは田舎にいながら、ヒットチャート番組を見て、かっこいい世界だなあと。こういうのを作っていく仕事はいいなあと思ってましたね。
MC:90年代、MVは盛り上がってましたよね。
関:そうですね、田舎の少年からしたらすごくきらびやかな世界に見えました。
MC:そんなバイト時代を経て、どこからこういったお仕事をされるようになったんですか?
関:そんなに甘い世界じゃないとわかっていたので、どうやって潜り込めるかみたいなことをずっと考えてましたね。バイト先の店長が映画監督さんと知り合いでそこで紹介してもらってそこがスタートですね。最初はもうほんと、カバン持ちみたいなところから始めました。弁当発注からなにからなんでもやりました。
映像制作の中でもMVに携わりたいという気持ちはずっとあったので、色々な人にその話をしていたら「じゃあやってみる?」って声をかけてもらって、それがきっかけですね。
■ 過去の代表作について
MC:そんな関さんも今となっては代表作だらけですよね。いろいろと過去の作品を拝見しながら苦労話や当時のエピソードをお伺いできればと。
関:苦労話しかないですけど(笑)
・サカナクション「アルクアラウンド」MV(2010年)
MC:まずは、サカナクションの「アルクアラウンド」。2010年の作品です。これは大変だったでしょう?
関:大変だった…ってあんまり言い過ぎるとつまらなくなるんですけど(笑)マイクスタンドに歌詞を貼り付けて並べてるんですが全部の歌詞やりたいっていったらふざけんなって言われて(笑)並べるだけで10何時間かかっちゃって撮影しだしたのがもう夜中の12時とかでしたかね。その間(サカナクションの)メンバーもずっと待たせて…そのあと何回も何回もトライして、何テイクとったか覚えてないですね。実際使っているのが最後から2番目のテイクです。この後もう1回だけって思ったら(夜が明けて)空が白けてきちゃって。
MC:これはCGででも作れると思いますがなぜあえてアナログで?
関:まずは歌詞を見せたいという強い要望がアーティストからあったんですよね最初はCGという話もあったんですけど、やっぱり見ればすぐCGだってわかっちゃうんで、そしたら本当に置いてみようとなりました。
関:あとは(曲名が)アルクって言ってるんだから誰か歩かないととだめだろうな、とか(笑)拾えるところをどんどん拾っていって詰め込んだ感じですね。このアイデアを突然ひらめいたというよりは曲からの要素をひとつひとつ拾っていったらこうなったという感じです。
・木村カエラ「Sun shower」MV(2010年)
MC:次は木村カエラの「Sun shower」。2012年の作品です。踊る木村さんの後ろでリアルタイムで変化していく映像が映し出されていきます。
関:これはマッピングとはまた違う作業になるんですけど、プロジェクターでリアルタイムで(絵を)作っています。本人から色んな気持ちをパッと白で染めていく、みたいなイメージが出てきてそこからスタートしました。それだけじゃつまらないので、小道具も舞台みたくすれば?プロジェクションしただけじゃつまらないからカエラさんの動きに合わせてその場でつけていくのは?と発展していきました。
MC:劇場で見ている感じですね。
関:映像って難しいのはこれ画面の中央だけ撮っちゃうとただの背景つきのよくあるMVになるんですよねある程度、まわりでこういう事をやってるんだよ、っていうネタバラシもやらないとっていう。うちの母はこれが一番好きらしいです(笑)手作り感というか暖かい感じがいいんですかね。
MC:これはあえて最初にネタバラシだったんですか?
関:最近は結局みんなMVはYoutubeでみますよね。そうすると最初の何秒かで飛ばされちゃうこともすごくある。つかみっていうのはすごく大事だと思うんです。
あと、飽きっぽいというのは人間すごくあると思います。僕もそうなんですけど(笑)単調になっちゃうと、「もう違う画がみたい!」って感じで切り替えちゃうことはすごくありますね。
・Perfume「Magic of Love」MV(2013)MV
MC:その関さんの個性がすごくでているのが次の作品かもしれないですね。Perfumeの「Magic of Love」です。これはすごく切り替えも激しいトリッキーな作品ですね。
関:タイトルにマジックってついてるし、いろんなトリックやギミックをどれだけ入れられるかっていう挑戦ですね。映像は刺激物だと思うので、どれだけ刺激を与えられるかというのもいつも考えています。普通ありえないような色の組み合わせをどんどんいれて、これは彼女たちのかわいらしさで成立しちゃうようなところありますね。
MC:60年代のポップなカルチャーがはいっているがこれは関さんの意図ですか?
関:そうですね、ベースの模様はこんなのがいいじゃないかとは話はしますね。ただその後は衣装さんとかが形に落とし込んでくれる事が多いです。専門職の集まりなので、相談しながらですね。そういう話は事前の打ち合わせで毎回めんどくさいぐらいしますね。
MC:やっぱり撮ってみないとわからないものですか?
関:ある程度は分かるけど100考えて80とれたら御の字です。思っていたとおりにとれないなんて日常茶飯事です。とくに(屋外の)ロケーションは、天気とかこんな光じゃなくてみたいなのは常にありますね。もちろん100点は目指しますが気持ちの持ちようですよね。いつのまにか120点になっていたみたいな事もあるし。
・OK Go「I Won’t Let You Down」MV(2014)
MC:それでいうと2014年の作品、OK Go「I won’t let you dowm」はシミュレーションがすごく大変だったんじゃないですか?
関:そうですね、彼らはカット割りを絶対しないという強いこだわりがあったので特にそこは大変でしたね。こんなにシミュレーションに時間かけたことないかもしれないです。通常MVは1ヶ月ぐらい時間をかけるんですけど、これは6ヶ月ぐらいかかったかな。
MC:メンバーの乗っている一輪車とか最新の技術が目一杯詰まってますよね。
関:今でこそドローンでの撮影ってすごくメジャーになってきたんですがこの時は知る人ぞ知る存在だったのでどうやってるの?ってよく聞かれました。GPSで制御する人と文字通り操縦する人と、何人も集まってひとつのドローンを飛ばすという作業は僕も知らなくてこの撮影で初めて知った感じでしたね。
関:OKGoはMVの概念を大きく変えたバンドだと思います。そんな彼らと一緒に仕事を出来たのは楽しかったです。スケール大きくしようというゴールをやってやってましたね。なので最後は(ドローンを)上がれるだけ上に上げて、と指示を出したところこの雲が偶然きましたね、鳥肌が経ちました。
この後もう1テイク撮ったんですがさっと入り込む光やなんかがこのOKテイクほどではなかった。
MC:テクノロジーはテクノロジーとして進歩し続けますがアナログのハプニング感というのはありますよね。
関:そうですね、光とかはシミュレーションしてもいいんですけどそこで思ったようにはなかなか行かないし。そこに注力するわけじゃなくてここまでというゴールを決めて、そこに向かってトライしているときに出て来るものはあるんだろうなと思います。
MC:CGで出来ることとアナログで出来ること使い分けてらっしゃる印象です。そんな関さんからみてプロジェクションマッピングってどうですか?
関:初めて見たときはこんな映像の新しい表現が出てきたんだ、という衝撃を受けました。これから作る人は大変だ、とも思ったけど(笑)本当に強いインパクトを感じました。
■東京国際プロジェクションマッピングアワード vol.0 受賞作品を見ながら
学校名:首都大学東京 インダストリアルアートコース / チーム名:SHIFT
・vol.0 最優秀賞 作品名:PLUS ONE
関:まずビックサイトってだけでかっこいいですよね(笑)現場でみたいですよね。大きいですからやっぱり。こんなところで自分で作った作品を流せるなんてこんないい事ないですよ。僕もクラブVJをやったことはあるけどあれでも何百インチとかですから、まず大きいっていうのはそれだけで楽しいですね。そしてこの幾何学模様をきちんとつかっているのがインダストリアルデザインって感じですよね、インダストリアルデザイン、よくわかんないですが(笑)展開がたくさんあって見ていて飽きないのがいいですね。
学校名:多摩美術大学 / チーム名:テクノ家
・vol.0 優秀賞 作品名:Tamping Traveler
MC:これは噂によると問題作らしいです。
関:確かに(笑)ただ、大きいスクリーンのお陰で壮大な話になってる気はしますよね。こうやって部屋で見てるのと現場で見ているのとでは感じ方がだいぶ違う気がします。この尺のCG作るのはまず大変ですけど、絵としては完成度が高いですね。音がもう少ししっかりするといいのかな。効果音をもっと使うと良いかも。まあ、宇宙に音はないんですけど(笑)
学校名:デジタルハリウッド大学 / チーム名:VISIONICA
・vol.0 優秀賞 作品名:CYBER-TRIP
関:結構クラブのような雰囲気ですね。この逆三角形が2つ並んでいるというのはライブのようなイベント会場のようなものと相性よさそうですよね。真ん中にダフト・パンクがいてもおかしくなさそうですもん(笑)
クラブ的な雰囲気と幾何学図形との相性がやっぱりいい。DJいそうな感じしますよね(笑)
実際ライブやコンサートでもこうやって2画面つかって盛り上げるというのはありますね。プロジェクションマッピングという技術は最近はライブでも使われることが多いですが、光量の問題がいつもついて回りますね照らされてるステージだと見えなくなっちゃうっていう。クラブとかだと(会場が暗いので)いいですよね。マッピングをどう活かすのかというのは常に課題です。
■学生からの質疑応答
学生:関さんは映像やグラフィックなど多方面で活躍されていて、自分もそうなりたいが今何をすべきでしょうか?
関:勉強するしかないよね~~(笑)僕の作品は結構アナログとデジタルを行ったり来たりしているんだけど僕らの世代がちょうどデジタルへの移行期で両方に関わらざるを得なかった。パソコンとかアフターエフェクトとか、手を動かしてみたけど下手だからやめよう、とか(笑)
グラフィックもやるつもりはなかったんです。ただ好きなCDのジャケはいっぱいあったんです。ジャケ買いをしてみたり。そういう事から興味をもって、後は自分で独学で学んでいく感じですね。中学のときなんて野球やってたんで、 美術は1とか2だった(笑)学生だったら時間もあると思うので、興味あることは遊びでもなんでもやった方がいいです。なんにもしなかったなあっていうのはおじさん的には後悔しているので(笑)
学生:プロジェクションマッピングの作品を作ったときにプロジェクションマッピングっぽい表現じゃないと言われてしまいました。表現の基準ってどこにあると思いますか?
関:えっ、難しい!(笑)それを言うと、そもそもプロジェクションマッピングってなんですかね?
(トークショースタッフより)「まあ、投影すればいいんじゃないですかね(笑)」
関:おれより適当じゃん!!(笑)
でもそうですね、なんか言われても無視すればいいじゃんと思いました。これは新しいやつだから、あなたにはわからないかもね、的な(笑)型にとらわれず、あまり気にせずにいきましょう。
学生:今2つの学校の合同チームをまとめているのですがなかなかうまく行きません。全然別の方向を向いている人たちを上手く両立させる方法はありますか?
関:うーん。説得するしかないよねえ(笑)リーダーはいるの?あ、君か。とりまとめているのが君なんだったらあなたがいいと思ったものを通していくしかないかも。自分が目指す理想に向かって何がこのチームにできるかというのを決めなくちゃいけない。迷っちゃいけないと思う。その上でこれはやめてくれ、というのもちゃんと言わなくちゃいけないし2つの間を取り持つとか、おべっかを使うという考え方だとなかなかうまく行かないですね。自分で決めないといけない。
MVを作る時もやっぱりそう。皆でやってるとぶつかる時って当然ある。意見が合わないもの同士の一番の解決策は会って話すこと。でもそこでもなんで駄目なのか、こうしたら良くなるっていう理由を自分でしっかりもたないと進まない。2ついるからいいとこどりしよう、みたいなものはだいたい失敗するから、そこはもう腕の見せどころだよね。監督は味方も多いけど敵も多いからね…あれ人生相談みたいになってきたな(笑)
■最後に学生に向けて一言
関:学生の頃とかなかなか何が良いとか悪いとかわからないですよね。わかんなくてもいいと思うけどそのかわり、自分の好きな事や興味のある事に没頭した方がいいと思う。学生の時間を有効につかった方がいい。そして勉強した方がいい。みんなもご両親に言われるでしょう(笑)この年になって親に勉強しなさいって言われたのが染みますね。
MC:なんだかいい話になってきましたね(笑)
関:そうですか?(笑)まあプロジェクションマッピングにかぎらず、驚かせてやろうって気持ちで作ったら絶対いいものが出来ると思いますので。12月の上映会では皆さんの作品を楽しませていただければと思います。
以上
■東京国際プロジェクションマッピングアワード vol.1
若手クリエイターによる日本最大級のプロジェクションマッピングアワード。
2020年の東京五輪開催に向け、世界で活躍できる若手映像クリエイターの才能を発掘し育成する機会創出のために設立されました。
当アワードは東京ビッグサイトという大きな舞台を通じ、ライブでしか届けられない迫力と感動を体感できる場として、一般の方にも開かれたイベントです。今年6月より国内・国外問わず広く学生からの参加を募り、全26チームの応募より厳正なる一次審査を行い、17チームを上映会の出場チームとして選出しました。
出場チームは、8月よりプロジェクションマッピングのオリジナル作品の制作を開始しており、12/17(土)に東京ビッグサイト会議棟に投影する形で作品を上映します。上映中は、映像・現代美術の専門家及び映像監督、映像作家、映像クリエイター等で構成される審査員団により審査を行います。
冬の夜空を飾るプロジェクションマッピング体験にぜひご来場ください。
名称 : 東京国際プロジェクションマッピングアワード vol.1
日時 : 2016年12月17日(土)上映会 16:30開場 17:00~18:10 表彰式・懇親会 19:00~21:30
会場 : 東京ビッグサイト 会議棟前広場及び会議棟内
主催 : 東京国際プロジェクションマッピングアワード実行委員会
運営 : 株式会社ピクス、株式会社イマジカデジタルスケープ
共催 : 有明エリアマネジメント連絡会、一般社団法人 東京臨海副都心まちづくり協議会
株式会社ピクス 制作部 広報担当:神戸(かんべ)
TEL:03-3791-8855
e-mail:pmaward@pics.tokyo
株式会社イマジカデジタルスケープ プロモーショングループ 広報担当:藤吉
TEL:03-5459-6203
e-mail:pmaward@dsp.co.jp